人的資本経営の実践のために

米ギャラップ社の2022年グローバル職場状況リポートによれば、日本の従業員エンゲージメント(会社への貢献意欲)は5%に過ぎません。国際競争力を取り戻すには人への投資が急務となっています。企業は社員の主体的学びを応援し、キャリア自律を高めることによって、組織のエンゲージメントスコアも上がります。

今は人的資源経営から人的資本経営への転換期にあります。資源は変わりませんが、資本は伸ばせます。人を伸ばすエンジンは自発性、キャリア自律です。
失われた30年の平成期には、個人の自立に目が向けられましたが、組織力が弱まり、経済的には停滞してしまいました。また、長年同じ職場で同じ人たちと働き続けると、キャリアプラトーと呼ぶ停滞に陥ってしまいます。①言われたことをそのままする、②同じ業務を続ける、③目の前の業務をこなすというやらされ感も停滞を招きます。人的資本経営を実践する上での課題として、従業員スキル・能力の情報把握とデータ化が54.5%と最多でした。個人の自律的な学びを重視し、リスキリングの機会を与え、組織力の向上につなげることが必要になります。人材戦略を経営戦略と密接に連携させ、グローバル人材を選抜・育成していくことが大切です。

停滞から脱するには個人と組織の関係を良くする自律が必要です。自律型キャリアを育てるには、①社内公募制、②社内外の副業、③兼業などが有効です。自律で人的資本を最大化し、企業の生産性と競争力を上げることが大切です。日本企業は、社員の自律を促してエンゲージメントを高め、失われた40年を取り戻さなければなりません。

(2022年11月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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