今年のノーベル化学賞

今年のノーベル化学賞は、酵素、金属に続く第3の触媒である有機触媒を開発したことにより、独米の研究者に与えられました。
触媒は長らく、生体内の化学反応を助ける酵素と、金属を含む分子の2種類のみと考えられていました。しかし、酵素は複雑な構造で人工合成が難しく、金属触媒は高価で有害なものも多いという課題がありました。リスト教授は、炭素や水素などからなる小さな有機分子(アミノ酸)に、酵素と同様の触媒作用があることを発見し、マクミラン教授は、金属触媒と同じ働きを持つ有機分子を開発しました。
この有機触媒の特徴は、有機分子でできていることに加え、不斉合成も可能であることです。これは右手と左手のように対称的な立体構造を持つ2種類の化合物のうち、片方だけを合成できる方法で、医薬品の製造では不可欠の技術となっています。また、従来の金属触媒より安価に製造できる上、製造工程を省略することも可能で、副産物が減ります。インフルエンザ治療薬のタミフルや抗うつ剤のパキシルといった医薬品の合成や、太陽電池素材などの製造にも広がっています。

(2021年10月10日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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