今年のノーベル物理学

今年のノーベル物理学は、地球気候モデルの開発でプリンストン大学の真鍋淑郎上席研究員に与えられました。世界各国が温暖化対策を講じても、今後約20年で平均気温の上昇幅が産業革命前比1.5度に上昇すると予測し、世界に警鐘を鳴らしました。この予測の道を開いたのが、真鍋氏の研究でした。
本来は3次元で広がる大気を地上から上空まで続く1本の棒に見立て、上下方向に並んだ点のデータの相互作用で解析する手法を考案しました。この1次元モデルと呼ばれるこの手法で、扱うデータ量が減り、時間がたつと各点のデータがどう相互作用するかの計算が可能になりました。これが気候モデルの基本的な考え方となり、現在も応用されています。
このモデルで、大気中の二酸化炭素(CO2)が2倍に増えると、地表の気温が2.36度上昇すると予測しました。CO2と温暖化との関係性を表す概念である気候感度で、IPCC最新報告書の計算結果である3度上昇に反映されました。

(2021年10月10日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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