低出生率の罠

 合計特殊出生率の低迷が長く続くと、低出生率トラップからの脱出は困難になります。若い人々が新しい環境に慣れてしまい、価値観が変わってしまう可能性が高くなります。少子化によって労働人口が減少すると、国は社会保障手当を切り捨てて、定年の年齢を引き上げたり、税率を大きく上げるしか手立てがなくなります。労働人口の高齢化に伴い、経済成長が望めなくなり、福祉国家体制だけでなく、国の存続そのものを脅かすことになります。
 子どもを持たない人が増えるにつれ、子どもを持つ人々の経済的コストが増加し、それが子どもを持とうとする意欲を減退させてしまいます。今まさにわが国は低出生率の罠に陥ろうとしています。これはオーストラリアの人口学者ルッツ・ウルフギャングによって提唱されました。このまま出生率の低い状況が長期的に続けば、社会構造がますます子育てに不利になり、低出生率から逃れられなくなります。こうした状況を逆転させることができないと、家族中心の社会は崩壊してしまいます。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。