低迷するわが国の科学技術研究-Ⅱ

運営費交付金の削減がもたらしたもの
科学技術基本法が1995年に制定されてから、四半世紀余が経過しました。日本はこの間、米国籍を含め20人の研究者がノーベル賞に輝いていますが、近年は研究力の相対的な低下が厳しく指摘されています。
文部科学省が大学の論文数の変化要因を分析した結果、研究に使う物品の予算額より、教員や博士課程の学生など研究者の実質的な人数の増減が大きく影響しています。国立大が2004年に法人化され、運営費交付金が削減されています。優れた研究計画などを選んで配る競争的研究費は増えましたが、東大など論文数上位の大学に集中する傾向があり、多くの大学は人件費削減などを迫られています。
常勤の教員は上位校と医科大で急増し、医学部のない大学で減っています。大学病院の経営が法人化で改善された効果が重なっており、医学部のある大学も、他学部の教員は減ったとされています。教員数が減ると、残った人に教育や雑務の負担がしわ寄せされ、実施的な研究者数はさらに減少することになります。教員の職務時間のうち研究時間の割合は、小規模校ほど下がる傾向が見られています。

(2022年1月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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