保育事故を減少させるために

静岡県牧之原市の認定こども園で、3歳児が送迎バスに置き去りにされ、亡くなる悲しい事故が起こりました。置き去り以外にも重大な保育事故は相次いでいます。内閣府によれば、2021年は2,347件で、集計法を変えた2015年以降で最多となっています。2020年も2021年も、それぞれ5人の子が保育施設で亡くなっています。子どもの命を守るために幅広い対策が求められています。
まずは保育士の配置人数を増やし、待遇を改善すべきです。保育士が1人あたりで見て良い幼児の数は国の基準で決められています。日本は1~2歳児なら6人、4~5歳児なら30人です。4~5歳児の基準は戦後まもなくから変わっておらず、先進国平均の約2倍に上ります。先進国の中でも低い保育士の配置基準や待遇を改善しないと、危険な環境は変わりません。
1人の保育士が多くの子どもを見る環境は、重大なミスが起こりやすくなります。保育中の置き去りや迷子など園児を見失う事案は、東京都だけで昨年度に78件報告されています。国の昨年の調査では、保育士の平均月給は、全産業の平均より約8万円低く、基本の公定価格を上げるべきですが、一時的な加算でしのぐ状態が続いています。開園時間も長時間化しています。長時間労働に耐えキャリアを積んでも給与が上がりにくい状況は、コロナ対策ものしかかり現場は疲弊しています。離職者は後を絶たず、慢性的な人手不足に拍車がかかっています。
保育士の採用がピークを迎える1月時点で、全国平均の有効求人倍率は2.92倍です。求人数は増える傾向にありますが、求職者が減っています。地方ではさらに人材不足で、静岡県では4.40倍にも達しています。しかし、災害時の拠点機能、障害児の預かりなども考えると、公立園をある程度維持することが現実的です。運営経費の財政負担が重いなどとして、民間に任せる動きが加速しています。しかし、保育園ごとの水準の差が大きく、園の質を担保するためには自治体による監査や検証体制が重要となります。

(2022年10月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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