健康分野のデジタル化の遅れ

アクセンチュアの2021年の調査によれば、日本や米国、フランス、ドイツな14カ国の平均で回答者の23%が、過去1年以内にオンライン診療の利用経験がありました。しかし、日本は7%にとどまっています。新型コロナウイルス禍で通院せずに済む遠隔診療の必要性が高まったのに、日本は利用が広がっていません。日本医師会などは、遠隔診療の拡大に慎重で、診療や服薬指導のオンライン化を阻む規制が多く、患者にとって使いにくく、海外より普及が遅れています。
コロナ禍を受け、政府は特例的に認めていた初診からのオンライン診療を今春までに恒久化しました。オンラインで診療から服薬指導まで完結できるようになっています。オンラインの初診料は、4月から2,510円と対面の9割弱の水準にまで引き上げています。それでも対面より低い状況が続いています。自宅などに利用場所を限定するなど、使い勝手の悪さも残っています。
自宅や老人ホームなど居宅に限定する規制を見直し、公民館や通所介護施設などでの受診を認める案を政府の規制改革推進会議は、厚生労働省と協議しています。デジタル機器に不慣れな高齢者らでも自宅以外で受診しやすくし、需要を喚起しようとしています。
オンライン診療が普及すれば、地方にいながら都市部の医師の高度な医療を受けやすくなるなどのメリットがあります。しかし、開業医などは対面で受診する患者が減りかねないとの危機感があります。オンライン診療には触診や検査が難しい制約があり、医師にはどのような場合に対面での診察に切り替えるか判断する力量も求められます。オンライン診療を普及させるには、患者の利便性を高めつつ、プライバシーを守り、医師が適切な診断を下せるようにする工夫がいります。

 

(2022年4月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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