働くシニアの国際比較

米国では1970年代まで65歳定年が一般的でしたが、1986年に年齢を理由にした不当な労働条件の制約だとして定年が廃止されました。65歳定年だった英国も2011年に定年を理由とした解雇を禁止しています。カナダやオーストラリアなどにも定年は存在しません。日本同様に年金の支給開始年齢が引き上げられている欧州では、定年延長が相次いでいます。オランダは66歳、スウェーデンは68歳など、日本より高い定年を設定する国が多くなってきています。
定年の存在にもかかわらず、日本のシニアは国際的に見てもよく働きます。労働政策研究・研修機構の調査によれば、2018年の65歳以上の労働力率は、日本は24.7%と高くなっています。米国の19.6%、英国の10.6%など、定年がない国を大きく上回っています。再雇用制度の浸透に加え、年金の減額をアルバイトなどで補おうとするシニアが少なくありません。
諸外国では年金の支給開始後にリタイアするのが一般的です。生計の糧を得られるなら、年をとってまで働きたくないとうのが標準的な考え方です。一方、日本では、生活に困らない蓄えがあっても働きたいというシニアが多くなっています。仕事は単にお金を稼ぐ手段ではなく、人や社会とのつながりを得るものとの発想が根底にあります。

(2020年6月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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