働く女性の健康支援-Ⅰ

女性のライフサイクルと健康問題
女性のライフサイクルは、小児期、思春期、性成熟期、更年期、老年期に分けられ、それぞれの時期によって罹りやすい疾患が変わってきます。そのうち思春期から更年期までは、女性は常に女性ホルモンの影響を大きく受けています。



女性ホルモンにはエストロゲンと黄体ホルモンがあり、概ね28日の周期で変動しています 。これを性周期と呼びます。卵胞期に卵巣からエストロゲンの一種であるエストラジオールが分泌され、それにより子宮内膜が増殖します。卵胞が膨らんだのちに排卵すると、今度はその卵胞は黄体となり、内因性の黄体ホルモンであるプロゲステロンを分泌します。妊娠が成立しなければ、黄体は退縮して白体となり、卵巣からのエストラジオールとプロゲステロンの分泌が減少することで、妊娠に向けて増殖した子宮内膜が剥がれ排出されます。これが月経です。
月経に関連する症状としては、月経中でも多くの女性が悩まされているものは、月経困難症や過多月経、月経前症候群(PMS)です。Tanakaらの報告によれば、日本人女性を対象とした検討では、74%の女性が月経症状を感じており、50%が月経痛を、19%が過多月経を訴えていました。それぞれの月経症状が仕事へ及ぼす影響として、月経症状が強いほど、また月経量が多いほど仕事へ影響していると回答しています。月経に関連する労働生産性の低下による年間推定経済損失は、6,830億円にも及ぶと試算しています。

2018年に日本医療政策機構が、働く女性2,000人を対象に行った調査によれば、PMSや月経随伴症状によって、仕事の出来が元気な時の半分以下になると回答した人が約半数もいました。月経に関する症状への対処として、何もしていない人が約45%と最も多く、産婦人科を受診したと回答した女性においても、症状が出てから受診まで4カ月以上かかっていた人が半数以上でした。月経に関連する症状は多くの女性にみられ、仕事に明確に影響しているにもかかわらず、治療に至っている女性は少ないと思われます。

(よぼう医学 2022.Spring №16)
(吉村 やすのり)

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