児童虐待―XIII

虐待とホルモン分泌
 虐待とホルモン分泌との関係も分かってきています。小さい時期に虐待体験をずっと受けて、なんとか無事に保護された被虐待児のホルモン研究の成果が発表されています。ストレスホルモンであるコルチゾールと、愛情ホルモンであるオキシトシンという脳から出るホルモンが調べられています。安定群というのは、施設に入って1年以上経ち、仲間との触れ合いができて先生との安心した関係ができている、安定した環境に置かれた保護群です。不安定な環境というのは、未保護群でもあり、危険な状況にはないがまだ保護されているとは言い難い環境にある子どもたちです。
 未保護群に抑うつ気分が強く、未保護群の朝起きた時のコルチゾール値は、安定群に比べて高くなっています。施設に入所して安定した群の子どもは、夜寝る前に脳から大量のオキシトシンが出ています。オキシトシンは、妊娠、出産、子育てに一番関わっているホルモンです。それが子どもたち、大変な経験をした後に、安定した状況に置かれると、抑うつ気分がないどころか、ストレスを除去するようにオキシトシンが大量に出るようになっています。

(「周産期から見つめなおす児童虐待:アタッチメント障害の脳科学」)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。