再び子宮頸がんワクチン接種の必要性

 最近では、国のワクチン接種プログラムにHPVワクチンを組み入れたオーストラリアや欧米各国から、疫学データとしてのHPVワクチンの有効性が相次いで報告されています。4HPVワクチンを国のワクチン接種プログラムに取り入れた国々の状況システマテイクレビューによれば、オーストラリアでは過去10年でHPV6/11/16/18型感染の減少率は最大で約90%、HPV16/18型感染の減少率は約80%、デンマークでは約85%の高度上皮内病変の減少と将来の浸潤子宮頸がん減少が予測されるなどといった数多くの結果が報告されるようになってきています。米国では、世界に先駆けて子宮頸がんの約90%を予防し、男女の中咽頭がんも含む様々なHPV関連がんの予防を期待できる9HPVワクチンを、2015年より1112歳の女児・男児への定期接種として導入し、政府関連組織から接種を促す広報を積極的に行っています。
 HPVワクチン接種率が高い先進国を中心に、子宮頸がん対策型検診の手法をハイリスクHPV検査によるファーストスクリーニングと細胞診をトリアージとし、検診間隔も5年以上と延長する方向に大きく動いています。このような国際的な動きの中、日本だけが子宮頸がん対策が遅れています。日本でこのままHPVワクチン接種率が低迷が続けば、今後多くの女性がHPV16/18型感染の危機にさらされ、若年者の子宮頸がん罹患率・死亡率の増加に歯止めがかからないような状況が起こることが大いに懸念されます。現状の日本のHPVワクチン副反応問題の多くは、国民にHPVワクチン接種のリスク・ベネフィットの正確な情報が伝えられていないことに起因します。また、ワクチンと一連の副反応の因果関係が証明されていない現状や、HPVワクチンに関する海外からの重要なデータの情報も伝えられていません。
 国に対しては、一日も早く積極的な接種勧奨再開が期待されます。接種が再開されることになったならば、HPVワクチンを他のワクチンと切り離して扱わないことです。HPVワクチンを何か特別なものと考えず、児童が接種する他のワクチンと同じように扱うことが必要となります。生涯にわたってコミュニティー全体で病気を予防するための包括的予防接種と位置づけることが大切です。HPVの場合は、その対象ががん、つまり子宮頸がん及び男性性器と男女の咽頭がんの予防と捉えるべきです。性活動が始まっていない時期に接種することに疑問を抱く家族に対しては、この時期に接種するのは高い予防効果を得るためと説明することです。また、HPVワクチンの接種で性活動が促されることはないことが研究結果で分かっています。914歳で2回接種した場合のワクチンの予防効果は、1626歳で3回接種した場合と同等かそれを上回っているという研究結果も出ています。

(吉村 やすのり)

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