再生医療研究に関する新指針

文部科学省は、幹細胞や再生医療に関する研究の新指針をまとめています。大きな変更は、京都大学iPS細胞研究所のiPS細胞ストックと呼ぶ事業を公益法人に移すことです。この事業では、再生医療で使うのに適したiPS細胞をあらかじめ備蓄しています。2012年度から年間約10億円の公的資金を充ててきました。
公益法人は高品質なiPS細胞を製造し、企業や研究機関に供給します。受け取った企業が、高品質のまま移植直前の状態に育てたり、管理したりしやすいようにします。この法人に、iPS細胞研究所でiPS細胞の製造や供給を担う約100人を異動させます。プロジェクトごとの任期付きという不安定な身分から、公益法人の正規職員にし、優秀な人材を維持できるようにすることが狙いです。
もう一つは、自分専用のiPS細胞を安価に作るというもので、再生医療の普及を見据えています。製造コストを現在の10分の1以下の約100万円に、製造期間を今の約1年から数週間にします。2025年までに実用化する予定です。新指針には遺伝子を自在に改変できるゲノム編集を活用することも新た盛り込んでいます。人によって免疫の型の種類は異なるため、型を合わせずに細胞を移植すると拒絶反応が起こります。ゲノム編集で、免疫の型に左右されず使えるiPS細胞を作る研究などを推進しようとしています。
国際的に幹細胞を取り巻く環境は変化しています。特に米国では研究などに使う幹細胞を備蓄、供給する専門機関が続々と設立され、企業が研究用試料の作製などに利用しています。今後は企業などが参入しやすいように、いかに低コストで高品質な細胞を作れるかが重要となります。

(2019年8月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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