出生率低下に憶う

厚生労働省が公表した人口動態統計(概数)によると、2018年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)は、3年連続で100万人を割り、91万8,397人になりました。この数は、統計を取り始めて以来最少です。また1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率も3年続けて低下し、1.42になりました。一方、死亡数は136万2,482人で、前年比2万2,085人増となり戦後最多となりました。出生数を引いた自然減は44万4,085人で、初の40万人超となりました。少子化と多死化が同時進行すれば、人口減は避けようがありません。出生数の減少の原因について、出生数の約85%を占める25~39歳の女性の減少や晩婚化が影響していると考えられます。
もう一つの原因としては、結婚しない男女の割合が増えていることが考えられます。仕事や進学で地方から東京などの首都圏へ集中する傾向は、男性より女性が顕著であり、地方で子育て支援だけをしていても、出生率の上昇は期待できません。多くの企業において、特に女性にとって仕事と子育てを両立する環境が整っているとは思えません。若い人が早く結婚したり子育てをしたりしても、仕事を継続できるようなシステム作りが大切です。出生率は、子どもを持ちたいと思いながら足踏みしている若い世代の声に応えることによってしか回復は望めません。
特に2人目、3人目を断念する2人目の壁を今より低くすることが必要です。2人目の壁の理由で最も多いのは、教育費などの経済的な理由が考えられます。特に女性にとっては仕事と子育てを両立する環境が貧困なことも、強く影響しています。10月より、安倍晋三政権肝いりの幼児教育・保育の無償化が始まります。待機児童の解消にはつながらないとか、一部の高所得世帯が結果的に優遇されるだけで、効果は限定的との指摘もありますが、この無償化は多くの中流階級の世代においても有用な制度と思われます。現在、都市部においても待機児童は減少しており、地方においては定員に満たない保育施設も増えてきています。待機児童問題は数年後には解決されるはずです。女性に産むことばかり求めるのではなく、男性も含めた若い世代が家族形成をできる環境を整えることが急務です。

(吉村 やすのり)

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