出産費用と公的支援

正常分娩は病気ではないため、基本的に健康保険は使えません。妊娠12週以上での出産(死産・流産を含む)には、妊婦が加入する健康保険から42万円の出産育児一時金が支給されます。岸田首相はこのほど、50万円に引き上げると表明しています。出産育児一時金は、医療機関を通じて支払われるのが一般的です。妊婦側は窓口で分娩料など出産にかかった費用と一時金の差額を払います。出産費用が一時金の額を下回った時は窓口負担はゼロで、加入する健康保険から後日、差額を受け取ります。
通常、妊娠が分かると定期的に妊婦健診を受けます。健診の費用には自治体の助成があります。役所の窓口などで母子保健手帳の交付を受けた際に、健診時に提示すると、自己負担額が大幅に安くなります。実質的な給付額は地域により異なりますが、一般的に妊婦側の負担は小さいと言えます。
会社に勤めている人は、通常産前42日と産後56日の産休を取得できます。産休を取得し給与が支払われない間は、加入する健康保険から出産手当金が支給されます。金額は給与などで決まる標準報酬日額の約3分の2です。体調が優れないなど条件を満たすと傷病手当金を受け取れることもあります。
妊娠中に重度のつわりで入院したり、出産時に帝王切開になったりすると異常分娩とみなされます。医師が異常分娩と判断すると入院費や手術代、薬代など必要な医療行為が保険対象となります。妊婦側は原則として医療費の3割を負担し、1カ月あたりの自己負担に上限を設ける高額療養費制度も使えます。
健診や出産費用の自己負担分は所得税の医療控除の対象となります。生計を一にする世帯の医療費の合計金額が年間10万円などの基準を超えた場合、確定をすると税の還付を受けられます。通院にかかった交通費も控除の対象です。しかし、出産のために実家に帰省する交通費や入院時に使う洗面具の購入費などは控除の対象になりません。

(2022年12月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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