医の倫理について考える―Ⅰ

医の倫理とは
 倫理とは、人倫の道であり、ともに生きるための守るべき理(ことわり)とされている。つまり、人と人がかかわりあう場のふさわしい振る舞い方、仲間の間で守るべき秩序である。倫理には当然のことながら、時代の進歩には影響されない不易の倫理と同時に、時代に即した倫理もあると考えられる。不易の倫理は道徳の規範となる原理であり、行動の善悪を判断する内面的規範でもある。道徳が個人や家族など小集団の取るべき態度や心の持ち方をさすのに対し、倫理は客観的な道徳原理に基礎を置き、個々人の関係から社会にいたるまでを対象にし、より普遍性を持っている。
 生命にかかわる倫理を生命倫理と呼び、特に医療上、医師は一般に患者にその生命を委ねられている立場にあり、その際に倫理感が要求される。医療における倫理感は、学問の進歩や技術開発によって影響を受ける。これら生命倫理は欧米ではすでに学問体系化されており、生命科学、医療、保健の分野での人間のあり方を倫理的および道徳的観点から、系統的に論ずる学問としてバイオエシックス(bioethics)と呼ばれている。医の倫理には、医療のみならず医学研究の倫理が含まれる。医の倫理は職業倫理であり、診療に際して医師が心得ておくべき道徳的義務とされる。ヒポクラテスの誓いに代表される旧来の医の職業倫理に、バイオエシックスという視点、社会の視点、研究の視点が加わり、現代の医療倫理として発展してきている。医療が行われる際に守られるべきルールであり、医療倫理学は医療倫理を支える学問として捉えられている。医療倫理学は活きた学問であり、その考えは時代とともに変化しうる。

(吉村 やすのり)

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