医の倫理について考える―Ⅱ

医療における倫理原則
 医療における倫理原則は、ビーチャムとチルドレスの生命医学倫理のなかで提唱された善行(beneficence)、無危害(non- maleficence)、自律(autonomy)、正義(justice)の4つであるとされている。
 善行の原則は、個人の福祉や幸福を守ることを最優先させ、健康に寄与すべく最善を尽くすことを求めている。この善行の原則と表裏一体をなすのが、無危害の原則であり、他者(時には自分自身)に対して意図的に危害を加えることを禁じている。自律の原則は、近年最も強調されている原則であり、患者を独立した人格として尊重し、従来医師の裁量範囲とされてきた治療法の選択についても、患者を自律的に意思決定する権利主体とみなすものである。パターナリズムと呼ばれた医師―患者関係は、最近では自律主義へのパラダイムシフトが起こっている。このことは一方では判断能力のある成人であれば、例えその決定が標準的な医療から逸脱したものであっても、他者に危害が及ばない限り尊重されることも意味する。正義の原則は、配分における公正の原則としても理解されている。適正な医療資源の配分や、研究成果の医療応用がもたらす利益が特定の個人に偏らないようにするための配慮などがこれにあたる。

(吉村 やすのり)

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