医学部入試問題に憶う

東京医科大学が医学部入学試験の2次試験において、女子受験生の点数を一律減点していた問題を受け、文部科学省は、現在防衛医科大学校を除いて医学部のある全国81大学の入試について調査しています。日本経済新聞によれば、今春入試で、医学部の7割強は男子の合格率が女子を上回っていたとの調査結果を公表しています。男子に対する女子の合格率の割合が高い医学部もあり、最も低い医学部との最大格差は4.9倍もあるとしています。医学部は、私立大学を含め面接などの2次試験で、女子の合格率が男子の半分以下になる医学部があるなど大学側の評価が大きく影響しているとしています。
過去5年以内の志願者は、男子が約35万9千人、女子が約19万4千人で、男子が6割強を占めています。一方、合格者は、男子が約3万人、女子が約1万2千人で、男女別の合格率は男子が約8%、女子が約6%と男子が上回り、合格者の7割超を男子が占めており、志願者の割合から増えていたことが指摘されています。わが国の医師国家試験合格者の割合が、3割強でプラトーに達しており、諸外国に比べ、女性医師の割合が2割に満たない理由に、医学部入試の合格に不正があることが関与しているとすれば忌わしき問題です。
医学部入試が、医療系を含めた他の学部と大きく異なるのは、将来附属病院などで働く医師を確保する採用試験の側面がある点です。他大学医学部でも、男女間の恣意的な評価基準の差をつけているとは考えたくはありませんが、予備校などでは、医学部によっては男女の合格率に差があるとの指摘もみられます。こうした疑惑や疑念は、大学自体が払拭しなければなりません。大学自らが、入試の流れや合否判定の基準を明らかにすることも必要になってきます。医学部が求める医師の適性を、学力以外で判断することは裁量であったとしても、女性は出産や育児で医療現場を離れることが多いとの理由で合格率を抑えることは、許容されるべきではありません。
そもそも医師という職業は、女性に適した職業であると言えます。女性医師が5割以上を占める国においても、医療上の問題点は全く指摘されておりません。医療現場においても、女性医師が妊娠・出産し、子育てをしながら仕事ができる環境づくりが大切です。そのためには、パートナーとなる男性や男性医師の協力が不可欠です。社会も女性医師が子育てと仕事が両立できる制度を整えるべきです。女性医師の働きやすい環境は、医療現場における過重労働や長時間労働の是正にもつながります。こうした問題の発覚が、少しでも医師の待遇改善につながることが期待されます。

 

(2018年8月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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