医師の働き方改革

2024年度から始まる医師の残業規制は、原則、勤務医の時間外労働の上限時間を年間960時間(月平均80時間に相当)と、休日労働を含めて一般労働者と同じ長さに設定されています。しかし、地域医療の維持に不可欠な病院に勤務する場合など長時間労働が必要な医師には、年間の時間外労働を1,860時間(月155時間)以下とする特例を設けています。特例を適用する場合、健康確保のための措置を義務付けています。連続勤務時間は28時間までに制限した上で、終業から次の勤務まで9時間のインターバルを設けています。地域医療の維持に不可欠な病院への特例は、一時的なものであり、2035年度末の廃止が目標です。
長時間労働を余儀なくされている勤務医の働き方を見直す動きが広がっています。土曜日の外来を廃止したり、夜勤の人数を減らしたりするほか、看護師に業務の一部を任せるなど、先行して取り組む病院では、残業時間の削減につながっています。また、タブレット型端末を活用して情報共有を強化するなど、医療の質を落とさずに働き方改革をする模索が続いています。
しかし、医師の働き方改革を巡っては、地域医療が崩壊する恐れがあるという危機意識も根強いものがあります。時間外労働が制限されることにより、医師を確保できず、夜間の救急対応を中止する病院が出てきます。救急患者の受け入れを中止する病院が出ると、特定の病院に救急患者が集中します。労働時間に上限が設けられると、給与が低く民間病院のアルバイト勤務で補っていた大学病院の勤務医は、収入減を避けるため、収入も多く働き方改革も進んだ民間病院を選ぶようになる可能性も出てきます。大学病院で働く医師が減ると、地方に医師を派遣できなくなり、地域医療が立ちゆかなくなってしまいます。

(2019年7月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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