医師の地域枠

 医師が大都市部に集中し、地方の医師不足が深刻化しています。政府などは医学部の定員増や地域勤務を義務付ける地域枠を導入していますが、なかなかその効果は表れていません。2007年度には7,600人程度だった全国の医学部の定員を徐々に増やし、2016年度には9,300人ほどにしました。増えた部分には、自治体が奨学金を出し、学費を免除する代わりに、一定期間は各都道府県内での地域勤務を義務付ける地域枠を導入しています。地域枠では6年間の医学部在学中の奨学金を受ければ、通常は1.5倍の期間、9年間の地域勤務が義務づけられます。
 地域枠の医師を都道府県が責任を持って医師不足地域に配置するため、全国で地域医療支援センターの開設も進んでいます。それでも地域枠の医師は第1陣が医学部を出て、臨床研修を終えたばかりです。地域枠だけでは遍在問題は解決できません。日本ではほぼすべての医師が保険医登録していることから、医師不足地域での勤務が保険医登録の条件となれば、地方の医師不足は解消されるかもしれません。しかし、地方勤務の義務化を嫌う医師たちの根強い意向があります。医師の地域偏在、診療科の偏在を解消して、地方でも十分な医療を受けられる体制を維持するためには、義務的・強制的な仕組みを作ることが必要な時期にきているかもしれません。

(2017年7月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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