医療のビッグデータ制度

政府は、医療データを匿名化して民間が利用できるようにする次世代医療基盤法を施行しました。これが医療のビッグデータ制度です。制度の核となるのは医療機関からデータを集めて匿名化し、企業や研究機関に有料で提供する代理機関です。代理機関は2019年中にも認定する見込みです。どのような形式でデータを集め、提供するかは、代理機関の裁量が大きく関与します。
新制度にも多くの課題があります。過去の診断や病歴とつながったデータであることが重要です。同じ人物の病気になる前と病気になった後のデータが提供されなければ、因果関係などを分析できません。データを提供する医療機関が協力してくれなければ制度は絵に描いた餅になってしまいます。医師が情報を提供するインセンティブをつくる必要があります。情報提供への患者の理解も不可欠です。企業や研究機関に比べ、患者はビッグデータの利点を感じにくいと思われます。個人情報の漏洩に警戒感もあります。個人が自分の診察や健康診断とビッグデータの分析を照らし合わせて健康管理に生かす仕組みを作り、利点が実感できるような工夫も大切です。

(2018年12月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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