医療事故発生報告件数の減少

医療事故を調査して再発防止に生かす医療事故調査制度の活用が低迷しています。この制度は2015年10月に始まりました。事故が起きると、医療事故調査・支援センターに報告し、医療機関が自ら調査するのが基本となります。しかし、制度の対象となるのは、医療に起因する予期せぬ死亡や死産と医療機関が判断した場合に限られます。第三者による調査ではなく、医療機関の自主的な取り組みに任されているというのが特徴です。このため、消極的な病院は報告自体をしない傾向があります。
厚生労働省の推計から、年1,300件以上の報告が想定されていましたが、報告数は年300件台で推移しています。日本医療安全調査機構によれば、6年目に当たる今年9月までの1年間の報告は、327件と過去最低でした。調査するかどうかの判断が医療機関に委ねられ、院長の患者安全に対する意識に左右されてしまうことが背景にあります。

この医療事故調査制度は、院内調査が基本ですが、遺族や医療機関の求めで第三者機関が調査することもあります。医療界に、個人の責任追及につながることを不安視する声があり、医療側の裁量が大きい仕組みになっています。類似の事故でも病院によって対応が異なるという矛盾も顕在化しており、制度見直しが必要な時期にきているかもしれません。

(2021年12月1日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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