医療費の構造

 医療費は病気や怪我の治療のために1年間に医療機関に支払われたお金の総額を指します。患者の窓口負担でカバーできるのは全体の1割ほどで、健康保険などからの給付が5割を占めています。さらに残り4割を国と地方の税金で賄っており、医療費増が財政悪化や国民負担増に直結しています。医療費の約6割は65歳以上の高齢者が使っており、75歳以上だけで全体の4割弱を占めています。75歳以上の医療費の窓口負担は、現役時代並みの所得がある人を除き1割にとどまっており、医療費が増えた分の多くは、サラリーマンら現役世代へのしわ寄せが強まっています。
 医療費はこの15年間で10兆円以上も増えています。高齢化、医療機器や技術の高度化に加え、新薬の登場などで医療費全体の2割を占める薬剤費(調剤医療費)が大きく伸びています。高額薬剤の使用抑制を巡っては救命や患者の権利保護の観点から慎重な意見がある一方、放置すれば保険財政を圧迫し公費支出や保険料負担が急増するとの不安も強く、国は薬価制度の見直しに乗り出しています。2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定を控えています。賃金や物価が伸び悩む中、政府内には主に医師の人件費に充てる診療報酬本体も厳しい改定で臨まざるを得ないとの意見が多くなっています。

 

(2017年8月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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