医薬品市場の成長率

世界では、バイオ、化学などの学術研究やスタートアップの開発を資金面でベンチャーキャピタルなどが支え、監督官庁も審査・承認の相談体制や迅速化で後押ししています。業種、組織を超えた連携は、創薬エコシステムと呼ばれ、シーズ、人材、資金、ノウハウの歯車が勢いよく回っています。
米調査会社IQVIAの調査によれば、医薬品市場は、米国や中国を中心に右肩上がりなのに、日本は2016年度以降横ばいが続いています。2026年までの主要10カ国の市場予測では、日本だけマイナス成長です。業界には薬価を診療報酬改定の調整弁のように活用していることへの不満も募っています。
米国や欧州では、薬剤価格は費用対効果で算出されます。臨床試験の成績をもとに、既存の薬剤との比較、QOLの改善効果などから、評価するルールが主流となっています。欧州では費用対効果が低い医薬品は、保険対象として推奨されません。高額でも、効果が高い医薬品なら保険でカバーするなどメリハリをつけています。
しかし日本では薬価ルールが頻繁に変わり、その都度、事業計画の見直しが企業に迫られます。特許期間中でも薬価が下げられます。新薬を先駆けて承認する姿勢も乏しいのが現状です。わが国では、医薬品市場の振興や薬価制度の見直しに具体像はみえません。このままでは日本で革新的な薬剤を開発できません。

(2022年6月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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