博士課程修了後の雇用形態

大学院で専門分野を学んだ博士人材の活用が進んでいません。博士課程修了者のうち、不安定な非正規雇用で働く人は28.9%を占め、割合は学部卒の6倍の水準となっています。非正規の割合は、2012年度修了者の34.2%から減少していますが、社会人学生が増えた影響があり雇用状況が改善したとはいえません。2021年度の学校基本調査によれば、非正規の割合は学部卒が4.7%、修士課程修了者が3.8%です。博士人材の雇用の不安定さが際立っています。
背景にあるのは民間企業からの評価の低さです。専門の研究を続けたい意向が強く、柔軟性が低いことが指摘されています。大学院に対しては、社会のニーズを踏まえた人材育成が不十分という指摘もあります。研究のため大学に残る人は少なくありません。しかし、正規ポストは限られ、多くは非正規で働かざるを得ない状況です。
米国の有力大学院は、ITなど先端分野の研究に注力し、即戦力の人材を輩出しています。米国で企業に採用された博士の年収の中央値は、物理科学分野で11万ドル(約1,400万円)です。正規雇用を含めても日本の博士人材の待遇は低く、理工系修了者の年収は300万~500万円の層が最多です。
2000年度に16%を超えていた修士から博士課程への進学率は、近年10%前後へ下がっています。2018年度の日本の人口100万人当たりの博士号取得者は120人で、200人を超える米英独韓を大きく下回っています。

(2022年5月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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