受精卵の改変

 日米の遺伝子細胞治療学会は、遺伝子を目的の場所で効率よく改変するゲノム編集技術を、人間の胎児に育つ受精卵や胚細胞で使うことに強く反対するとの声明を発表しています。声明は、4月に中国のチ-ムが人間の受精卵を使って行ったゲノム編集実験の結果を論文発表したことを受けたものです。今後研究が進んで安全性が向上しても、実験の影響を長期間追跡するのが難しいため、胚細胞のゲノム編集や生殖細胞の改変を、倫理的に許容にできる形では行えないとしています。 一方、人間の出生につながらない体の細胞のゲノム編集は、現在もエイズ患者の治療に使われており、有用であり、適切に進められるべきであるとしています。
受精卵のゲノム編集の研究に対し、論文発表以前の20153月から、掲載を拒否したScienceNatureをはじめとした各種学術誌等で、ヒトの生殖系例のゲノムを編集すべきでないとの論調の意見が示されていました。科学者や政府の組織で社会・環境・倫理課題が論議されている間は、規制の緩い国においても、生殖細胞系列のゲノム改変すべきでないとしています。NIH20154月、ヒト胚の遺伝子改変を行う研究には助成金を付与しない方針であることを発表しました。またホワイトハウスも20155月、医療目的での受精卵の遺伝子改変について、将来世代への影響が不透明で、現時点ではこえてはいけない一線であると反対する声明を出しています。いずれにしても、受精卵のゲノム編集は遺伝子治療への臨床応用には意気尚早であり、課題が残ります。

(吉村 やすのり)

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