受精卵ゲノム編集の基礎研究

文部科学省の生命倫理・安全部会は、狙った遺伝子を効率よく改変できるゲノム編集を人の受精卵に施す研究について指針案を了承しました。部会では、国内で人の受精卵にゲノム編集を施す研究について、不妊治療などを目的とした基礎研究に限って認め、人や動物の子宮に戻し、妊娠させることは禁止することなどで合意しました。中国で起きたような問題に対し、一定の歯止めがかかることになります。
使用する受精卵は不妊治療で余ったもので、凍結保存期間を除いて受精後14日を超えた時点で廃棄します。遺伝性の難病やがんなどの治療を目的とした研究は含まれず、今後議論することになります。研究計画については、研究機関や大学の倫理委員会と国が2段階で審査します。受精卵の提供者に対しても、研究の目的や受精卵の取り扱いについて適切に説明することも盛り込んでいます。
海外では、受精卵をゲノム編集で操作する基礎研究が進んでいます。中国では、2015年に遺伝性の血液の難病の治療を目的に始めています。米国でも遺伝性の心臓病を引き起こす遺伝子変異を高い効率で修復する実験に成功しました。受精卵の段階で原因遺伝子を排除できれば、治療効果が高まります。しかし、安全性や治療効果の観点より、遺伝子操作した受精卵を母胎に戻すことは国が指針や法律で禁じています。

 

(2018年12月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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