受精卵移植の同意

 1215日に奈良家裁において、凍結保存していた受精卵を別居中の妻が無断で移植し出産したとして、奈良県内の外国籍の男性が、生まれた長女との間に法的な親子関係がないことの確認を求めた訴訟の判決がありました。体外受精など生殖補助医療により生まれた子どもと夫の法的な親子関係が認められる要件について、凍結受精卵を移植する際に夫が、生まれた子どもを夫婦の子として受け入れることに同意していることが必要であると言及しました。同意のないまま生殖補助医療によって生まれた子どもと夫の間に法的な親子関係を認めるのは相当ではないとしています。
 妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する民法の嫡出推定が及ぶか否かは、外観的に評価すべきであるとの最高裁判例に基づき、今回のケースでも適用されると判断されました。親子関係を確認するためには、別に嫡出否認の訴訟が必要だとして退けました。民法772条は妻が結婚中に妊娠した場合、夫の子と推定すると規定しています。母子の関係は出産の事実から確定できますが、父子関係は証明が難しく、父と子の法的な関係を早期に決めることにより、家庭の平和を維持することができるとしています。遠隔地に住んでいたりした場合は例外的に推定が及ばないとする判例もあります。嫡出推定を覆す手段に嫡出否認の訴えがありますが、訴えを起こせるのは夫だけで、提訴期間も「子の出生を知った時から1年以内」に限定されています。

(2017年12月16日 産経新聞)
(吉村 やすのり)

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