商業主義的な遺伝子検査

 唾液を採取し、病気にかかるリスクを調べる遺伝子検査サービスが広がっています。遺伝子検査には、1つの遺伝子の異常により発症する単一遺伝子疾患を調べるものと、SNP(スニップ、一塩基多型)と呼ばれる個人が持つわずかな遺伝情報の違いを調べるものとがあります。数万円の費用で生活習慣病やがんなど複数の病気を一度に手軽に分析してもらえます。しかし、一般人が分析結果を理解するのは難しく、専門医の助言が欠かせません。サービスの提供企業ごとに検査結果が異なる場合もあります。わが国においては、消費者向けの遺伝子検査サービスは、医薬品や医療機器のような厳しい規制がありません。
 消費者向けに提供されている遺伝子検査サービスでは、スニップに基づく検査が多くなっています。平均的な発症リスクと比較するだけなので、単一遺伝子を調べる場合と異なり、確定的な結果を示すものではありません。消費者向けの遺伝子検査は、エビデンスのレベルが低いものが多く、専門医の指導がないとかえって混乱をきたしてしまいます。病気の発症リスクには、ストレスや飲酒、喫煙、運動量などが様々な要因が関与しています。スニップを見ただけで、将来発症するかどうか分かるわけではありません。

(2017年6月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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