嗅覚の衰え

年とともに視覚や聴覚と同様、嗅覚の問題も増えてきます。高齢者に多いのは、風邪を引いた後などに、においがしなくなる感冒後嗅覚障害です。一方、健康でも徐々に衰えます。国内外の研究によると、50~60歳代以降に衰えは進み、85歳では約半数の人に嗅覚障害があることが分かっています。空気中や口の中に入った食べ物のにおいの成分が、鼻腔を通って嗅粘膜の受容器官に付着し、その刺激が神経を通って脳に伝わり、においを感じます。風邪で受容器官が破壊されたり、年をとって嗅粘膜の受容器官が減ったりすると、嗅覚障害につながります。
嗅覚障害の場合、視力の眼鏡や聴力の補聴器のように補助する機器がありません。人に気づかれにくく、困っていることが伝わりにくいことが特徴です。しかし、生活への影響は大きく、食べ物や花のにおいが分からなくなり、楽しみが減ってしまいます。本人が気づいていない場合も多く、注意が必要です。においを感じないために、腐敗した食べ物やガス漏れ、火災に気づかず命を脅かされる恐れもあります。治療法は確立していませんが、生活の中で意識してにおいをかぐことが重要とされています。

(2018年12月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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