国際卓越研究大学の創設へ

大学ファンドが支援する国際卓越研究大学は、2023年秋頃から順次認定されますが、数校にとどまる予定です。国公私立大44大学が申請を検討しています。文部科学省の選考基準は、他の論文への引用数が上位105に入る論文が、5年間で①1,000本程度以上かつ総論文数の1割程度以上、②研究者1人あたり0.6本程度以上のいずれかを求めています。トップレベルの研究大学に加え、中小規模の大学にも門戸を開いています。
国内大学が認定に向け動く背景には、海外との資金力の差があります。海外有力大学は、独自基金の運用益を重要な研究分野の投資につなげています。米ハーバード大学は4.5兆円規模の基金を持ち、収入の39%にあたる20億ドル(約2,700億円)を運用益が占めています。日本の大学は外部資金の獲得力が弱く、自由に使える予算が少なく、2020年度の独自基金の規模は、慶應義塾大学が870億円、早稲田大学が300億円、東京大学が190億円にとどまっています。
大学の資金力は研究成果を左右します。文部科学省によると、理工系を中心とした2016~2020年の引用数上位の論文は、東京大学が5,920本、京都大学が3,977本、慶應義塾大学が1,276本に対し、ハーバード大学は3万495本、米スタンフォード大学は1万4,210本、英オックスフォード大学は1万3,813本でした。国全体でみても研究力の低下は顕著です。引用上位10%に入る論文数は、1998~2000年は米国、英国、ドイツに次ぐ4位でしたが、2018~2020年は中国やインド、韓国にも抜かれ、12位に下落しています。
政府は骨太の方針で、イノベーションの創出の拠点である大学の抜本強化を図ると強調しています。世界最高水準の研究環境整備を成長戦略の要と位置付けています。スタートアップ企業の輩出や高度人材の育成など、認定校にかかる期待は大きいものがあります。

 

(2022年12月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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