地球温暖化研究の先駆け

今後のノーベル物理学賞は、CO2など温室効果ガスが地球の気温を上昇させていることを理論的に証明した真鍋淑郎博士に決定しました。大気が熱の放出を防ぐことで、地球全体の気温が上がる温室効果というこの現象そのものは、200年前から知られていました。18世紀後半に始まった産業革命以降、石炭などの化石燃料をたくさん使うようになり、化石燃料を燃やすとCO2が大量に出ます。その当時に比べ、既に世界全体の平均気温は1.1度ほど上がっていました。
世界の平均気温の上昇は、CO2や、メタン、フロンガスといった、大気中に熱を閉じこめる効果のある温室効果ガスが増えることで起こります。真鍋博士の研究が示したように、温室効果ガスは、大気中にたまればたまるほど気温を押し上げます。最新のIPCC第6次報告書では、大気中のCO2が2倍になると、気温は約3度上昇するとされています。
地球温暖化により、様々な影響がすでに出ています。世界各地で異常気象が観測され、日本でも、近年は数十年に一度と言われるような大雨がよく発生しています。海水温が1度高くなると、大気中の水蒸気は7%も増えます。水蒸気が多い分、大雨になりやすくなります。海水温が高いと、台風もより強くなります。熱波や干ばつなども起きやすくなります。それに、海面の高さが上ります。今世紀末までに気温の上昇を止めても、温められた水の体積の膨張が続くことで、海面は数百年にわたり上がると予測されています。
真鍋博士は、気候変動が叫ばれるずっと前から、大気と海洋を結びつけて気候の変化を計算されていました。人類が脱炭素社会に向けて大きく進もうとしているのに多大な影響を与えています。研究成果が、京都議定書やパリ協定など、温暖化対策を大きく進める世界の政策につながりました。

 

(2021年10月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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