多発性硬化症の治療

多発性硬化症とは国内に推定で1万人程度の患者がいる難病の一つです。神経細胞の髄鞘と呼ばれるさやが壊れ、脳や脊髄などで炎症が起こります。免疫の働きの異常で、自分の神経細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患と考えられています。手足のしびれや視力低下を引き起こし、再発を繰り返します。MRIで脳の病変の広がりを調べ、他の病気を除外するなどして診断します。医学生時代、神経疾患の中でも大変分かりにくい病気でした。
様々な神経症状が出る多発性硬化症は、症状の重さや経過には幅があります。再発と症状が落ち着くのを繰り返す再発寛解型が多いのですが、初めから歩行障害などが進む1次進行型や、再発を繰り返した後に障害が進む2次進行型もあります。進行型になると、再発は減る一方、脳が萎縮したり歩くのが難しくなったりして、認知機能が衰えるなどの障害が少しずつ進んでいきます。


根本的な治療はなく、悪化すると炎症を抑えるステロイド薬の点滴を受けます。従来から使われてきたインターフェロン製剤が効くのは患者の約7割です。近年、再発を防ぐ薬が増えてきています。選択肢が増えたことにより、再発で入院を繰り返す患者が少なくなってきています。ただし一部の薬は、免疫の働きの低下に伴う副作用で、麻痺や認知機能障害などを引き起こすことがあります。障害の進行を遅らせる薬が出てきていますが、まだ効果は十分ではありません。

(2018年3月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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