多発性骨髄腫の新薬

 多発性骨髄腫とは抗体を作る血液細胞である形質細胞のがんです。異常な抗体が大量にでき、異常なたんぱく質として血液中に出ます。その結果、正常な血液を作れなくなり、貧血や骨折、腎臓障害や免疫機能の低下が起きます。一般的には、がんになった形質細胞である骨髄腫細胞や異常たんぱく質が少なく、症状がなければ治療を始めません。しかし、ほぼ例外なく再燃しますが、早く治療しても生存率に差がありません。
 治療は薬物療法が中心となります。以前はメルファランなどの抗がん剤やステロイド剤が使用されました。しかし、現在では様々な薬剤(サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド)が保険承認されております。最近では、抗体の製造に関わる情報伝達の仕組みや、不要なたんぱく質を分解する仕組みが詳しく分かるようになり、そこを狙って新薬が相次いで開発されています。新薬の登場で、1980年代ごろまで発病後3年ぐらいだった生存期間が、平均7年ほどに伸びています。しかし、高価な新薬を次々と使うため、医療費が高騰しています。多発性骨髄腫患者1人あたりの医療費が2006年の年間約200万円から、2015年は500万円以上に増えています。その約半分を新薬の費用が占めています。

(2017年7月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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