多胎児をもつ親の苦しみ

育児支援のNPO法人、フローレンスの調査によれば、双子や三つ子といった多胎児を持つ親の約7割が、家事や育児の手が足りず支援が必要と感じていることが分かりました。
育児中につらいと感じることを複数回答で尋ねたところ、睡眠不足・体調不良と自分の時間が取れないとの回答が、いずれも77%でした。外出・移動が困難との回答も89%に上っています。気持ちがふさぎ込んだり、子どもにネガティブな感情を持ったりしたことがあると答えた人は、93%にも達しています。多胎育児家庭にどんな支援があれば気持ちが和らぐか聞いたところ、最も多かったのは、家事育児の人手で68%でした。金銭的援助が57%、子を預ける場所が52%でした。

多胎分娩の割合は、2017年で1.04%でした。わが国の多胎出産率は、体外受精が本格化した1990年代に急激に上昇しました。しかしながら、日本産科婦人科学会が移植胚数に関する会告を出したことにより、多胎は急激に減少しています。諸外国に比べても体外受精・胚移植による多胎率は最も低率です。

 

愛知県豊田市では2018年1月に、三つ子の母親が生後11カ月の次男を虐待死させる事件が発生しました。この三つ子も体外受精によって誕生した子ども達です。多胎児をつくらない努力も必要ですが、同時に多胎育児に対する公的支援も大切です。親が外出せずに済む居宅訪問型の一時預かりサービスの制度拡大や、ベビーシッター利用時の補助などが必要となります。また多胎出産が見込まれる場合には、妊娠中から行政が情報を把握し、必要な対応をとることも大切です。

(2019年12月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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