大卒者の年収

四年制大学への進学率は、2000年から2017年にかけて、男性は48%から56%、女性は32%から49%へと大きく伸びています。また、日本女性の就業率は、ここ10年で女性のМ字カーブの底といわれてきた30歳代が10ポイントも上昇しています。しかし、収入面では、日本女性の年収は米英と比べて極めて低いのが現状です。
大卒男性の年収の中央値は、30歳代半ばで500万円弱、50歳代前半では800万円近いピークを付けています。これに対し下位10%は、どの年齢層でも300万円を超えません。最近特に大卒男性の下位10%の年収が落ちています。下位20%では、30歳代前半に300万円を超え、40歳代には450万円程度まで上昇するので300万円超えは果たしています。
一方、大卒女性の年収分布は中央値をみるとピークは、26~27歳の260万円程度であり、その後は年齢とともに下落します。初職が非正規の女性もいますが、特に結婚で非正規に転職したり、出産で無職になったりする人が増えるためです。40歳代から労働市場への復帰が増える結果、有収入者が増えるものの低収入にとどまっています。中央値は30歳代半ばに150万円まで下がり、若干上がる年齢はありますが、その後も200万円を超えることはありません。上位30%に入っていないと、15年以上にわたり年収300万円を確保できません。
日本型雇用の下の家族は、男性が長時間働き、女性が家事育児を担い、子どもが育つとパートなどで働くことをひな型としてきました。今後の人口構成を考えれば、女性や高齢者の人的資本を最大限活用し、年齢にかかわらず力を発揮できる労働市場の形成が欠かせません。そのためには、女性が仕事を失わずに子どもを持てる方向に変えていく必要があります。企業を超えた専門性を評価する労働市場の形成が必要になります。生産性に基づき賃金が決まるような正社員労働市場の拡大が期待されます。

(2018年2月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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