夫婦別姓の選択に憶う

夫婦同姓は、明治期に施行された旧民法で規定され、今の民法においても継承されています。夫婦の姓については、民法750条が、夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称すると定めています。この規定が憲法の定める法の下の平等に違反するかが争われた訴訟では、最高裁判所大法廷が、2015年に規定を合憲と判断しています。旧姓はあくまで通称のため、運転免許証、健康保険証、医師免許証などでは使えません。しかし、パスポートでは、外国で旧姓での活動実績がある場合などに、書類提出などを経て認められれば旧姓を併記できることになっています。
女性の社会進出などに伴い、法制審議会が1996年に選択的夫婦別姓制度の導入を答申しています。しかし、家族のあり方や子どもの姓の扱いなどを巡って慎重意見が多く寄せられ、法案の国会提出には至っていません。2016年の内閣府の委託調査によれば、旧姓使用を認めている企業は45.7%に上り、従業員が1千人以上の企業では67.0%に上っています。国家公務員は、2001年以降職場での旧姓使用が認められていますが、政府は、2017年に対外的な文書などでも旧姓使用を原則認めるとしています。
結婚時に夫婦別姓を選べないのは不当だとして、国に損害賠償を求めて提訴する動きが広がっています。日本人と外国人の結婚・離婚や日本人同士の離婚の場合は、戸籍法に基づいて別姓を選べます。しかし、日本人同士の結婚では別姓を選ぶ規定がない点を挙げ、戸籍法は違憲だと訴えています。内閣府の世論調査によれば、選択的夫婦別姓の導入に必要な法改正を容認する人は42.5%に上り、反対の29.3%を引き離しています。18~39歳では5割を超え、若い世代を中心に支持する意見が強くなっています。男女が対等なパートナーとして家事や育児で協力し合うライフスタイルが浸透する中、選択的夫婦別姓制度の導入が急がれます。
女性医師が結婚する場合、医師免許証の姓を変更しなければなりません。旧姓にてキャリアを積んだ女性医師にとっては不利益を被ることがあります。さらに離婚した場合には、医師免許証の名前を旧姓に再度変更しなければなりません。夫婦別姓は、働く女性の仕事や日常生活での不便さを解消するためにも考慮されてしかるべきです。しかし、女性によっては夫婦同姓を希望する場合もあります。婚姻関係においても多様性を認めるべきです。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。