女性の健康を考える

女性の健康を保つための大切な役割をする女性ホルモンであるエストロゲンは、性成熟期には高く維持されていますが、閉経前後の更年期に急激に下がります。女性の一生を通じてこのエストロゲンは、激しい波のように変化しており、それに伴い様々な病気が起こります。
思春期には、様々な月経異常がみられます。月経前症候群(PMS)は、月経前にイライラ、抑うつや乳房・腹部の張りなどの症状がありますが、精神科に行ってもよく分からず、婦人科で初めて分かる人もいます。人間関係に問題が起こることもあります。月経に伴う強い痛みなどがある月経困難症は、職場に来てもパフォーマンスが上がらないなど、強くなれば労働損失は大きくなります。月経困難症を放置すると、子宮内膜症になりやすくなり、様々な痛みや不妊症、早産の原因になり、卵巣がんになる恐れも出てきます。
更年期障害は、エストロゲンが急激に低下し、体が追いつかないために出ます。顔のほてり、発汗、冷え、動悸、寝つきが悪いといった症状は、エストロゲン不足と因果関係がはっきりしており、エストロゲンを補うと消えます。ホルモン補充療法は、更年期の症状や骨粗しょう症の予防、治療などには有効です。乳がんのリスクが少しだけ上がりますが、アルコールや喫煙、肥満で上がるリスクと比べて大きくありません。
女性の社会進出が進んできていますが、女性には月経、妊娠・出産、更年期など、年齢やライフステージによって異なる女性特有の健康課題があります。これまでは個人の問題とされてきましたが、最近の調査結果から、女性特有の健康課題が就業継続や昇進に影響があることが分かってきました。少子高齢化が進み、女性が社会で活躍することがさらに期待される中、企業や社会もサポートを強化する必要があります。

(2023年3月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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