女性活躍の理想と現実

世界経済フォーラムが公表した2021年のジェンダー・ギャップ指数によれば、日本は156カ国中120位でした。G7の最下位で、6番目のイタリアとの差は大きくなっています。2020年のOECDの調査によれば、日本の女性は、家事・育児などの無償労働に、男性と比べおよそ5.5倍の時間を費やしています。OECDの平均の1.9倍を大きく上回っています。
新型コロナウイルス禍が拍車をかけています。2021年の内閣府の調査によれば、コロナ禍で家事や育児の時間が増えた女性の割合は44%になっています。男性の38%を上回っています。コロナは飲食・宿泊業など女性の就業者が多いサービス業の雇用に影響し、野村総合研究所によれば、2021年に103万人もの女性が実質的な失業状態に陥っています。
政界への女性の進出も進みません。男女の候補者数を均等にするよう政党などに促す政治分野の男女共同参画推進法の成立後に初めて実施した2021年の衆院選でも、女性の候補者は増えませんでした。候補者に占める女性の割合は17.7%であり、当選者では9.7%にとどまり、前回の2017年の衆院選の10.1%から0.4ポイント低下しています。ジェンダー・ギャップ指数を政治分野に限ると日本は147位で、その下にはわずか9カ国しかありません。国際的にジェンダー平等に向けた努力が進んでいますが、日本の政界の遅れは如実です。
政府は、2022年夏までに女性版の骨太の方針の策定を目指しています。女性の経済的な自立や男性の活躍の家庭や地域社会への拡大などの柱を据えています。女性の経済的な自立の実現へ、性別がキャリアに影響しない社会をつくる必要があります。公平な人事制度や実力主義、仕事と私用を両立できる環境の導入が不可欠と言えます。男性が意識を変え、男女問わず仕事と家事に取り組む社会が女性の活躍の前提となります。

(2022年5月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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