妊娠高血圧腎症の予防法―Ⅱ

アスピリンの投与時期
妊娠34週未満で発症する妊娠高血圧腎症早発型では、妊娠10~18週頃での胎盤形成が不十分であることが知られています。血管内皮障害により血小板が活性化され、凝固系が亢進します。また血管弛緩作用があるプロスタサイクリンが減少し、血管収縮作用のあるトロンボキサン産生が亢進する事により高血圧が生じます。さらに血管透過性が高まることで、蛋白尿や浮腫が生じます。アスピリンは血小板凝集を抑制すると同時に、トロンボキサンによる血管収縮を抑制することから、妊娠高血圧腎症の発症を予防すると考えられています。
Bujoldらのデータによれば、妊娠16週以前からアスピリンを1日60~150㎎を妊娠36週まで予防投与すると、妊娠高血圧腎症の相対リスクを0.47まで有意に低下させ、重症妊娠高血圧腎症を0.09まで有意に減少させています。さらに妊娠16週までのアスピリン予防投与は妊娠高血圧と胎児発育不全(FGR)の相対リスクを、それぞれ0.62、0.47まで有意に減少させています。一方、妊娠16週以降からアスピリンを予防投与しても妊娠高血圧腎症やFGRは有意に減少させず、妊娠高血圧のみ有意に低下させます。これらのメタアナリーシスの結果より、妊娠高血圧腎症のハイリスク妊娠例にアスピリンを投与するなら、妊娠16週以前に始める事が重要だと考えられています。

(平成30年4月1日 日産婦医会報)
(吉村 やすのり)

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