婦人科がんゲノム医療

がんゲノム医療は、がん患者の腫瘍部および正常部のゲノム情報を用いて治療の最適化・予後予測・発症予防を行う医療です。がんに罹患した人にはがん細胞の特性に応じた治療法の選択を、がんに罹患していない人にも遺伝情報に応じた予防法を、個人のゲノム情報にあわせてきめ細かく提案する医療と言えます。がん遺伝子検査とは、手術や検査の時に採取した腫瘍の細胞または血液を検体として、100以上のがん関係遺伝子変異等を一度に調べるもので、その結果をもとに患者さんのがんに適した治療法を導き出します。
一般にがん遺伝子パネル検査の結果から治療につながる割合は、約1割と報告されています。わが国では、がんゲノム情報管理センターが設立され、ゲノム情報と治験情報の共有も進められています。
婦人科がんの約1割は、遺伝性腫瘍であると考えられています。遺伝性腫瘍の原因遺伝子を知ることで、遺伝子の特徴に応じたがん予防が可能になります。婦人科がんは特に遺伝性の頻度が高いことが知られています。令和2年度の診療報酬改定で、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(Hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC)の一部に対して保険収載されました。卵巣がん発症者全例、乳がん既発症者の一部に対してHBOCの原因遺伝子であるBRCA1またはBRCA2(BRCA1/2)の遺伝学的検査、BRCA1/2リスク低減卵管卵巣摘出術、リスク低減乳房切除術が対象となります。

(日産婦医会報 令和4年6月1日)
(吉村 やすのり)

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