子どもの医療費の無料化

子どもの医療費の無料化とは、自治体が居住する子どもの医療費の自己負担分を助成するサービスのことをいいます。通常、医療費では、就学前で2割、小学生以上で3割を患者が自己負担しますが、自治体が肩代わりしていることが多くなっています。自治体によっては、親の所得制限や一部負担金を設けているところもあります。子ども医療費の無料化が今や自治体に広がっています。通院費では、中学生までと高校生まで助成するケースが8割に達しています。子ども医療費の無料化は、子育て世帯のつなぎとめ策になっているとの批判もあります。
無料化の拡充は安易な受診を招くとの批判もあります。現在子どもがどんどん減り、自治体が子育て世帯を奪い合っている状態です。18歳までの子どもの医療費と学費は、本来国が負担すべきであるとの考え方もあります。市町村は国に代わって医療費を助成しているといえます。かつて、高齢者向けを無料化して医療費が膨張しましたが、子ども向けを同列視はできません。
子どもの医療費の無料化を自治体が競って広げているような現状は、行き過ぎとの考えもあります。無料であるがゆえに、一部の患者は過度に受診し、過剰な検査・投薬をしている医療者もいます。それが公費負担の増大を招いています。自己負担がないからと、健康のためには必ずしも必要とは思えない医療が野放図に行われる面があります。子どもの健康を考えるなら、むしろ予防に費用をかけるべきだとの考え方もあります。新生児が精密な健診を受けられるようにすれば、病気の予防や早期発見につながります。
しかし、就学前の幼児の医療費無料化は必要です。若い子育て世帯にとって、子どもの医療費は負担になります。自治体の差をなくすために、国が全国一律に就学前まで無料としてもよいと思われます。また低所得世帯や一人親世帯の受診控えを防ぐためにも、医療の無料化は必要です。
自治体の子ども医療費の無料化は、国からの補助金や税金で賄われています。コスト意識を高めるためにも、無料は維持しても、いったん自己負担してもらったあとで還付するようなことも考える必要があるかもしれません。また、親の所得による負担率も考慮すべきであると思われます。子ども医療費無料化による医療費の膨張による国の借金を払わせられるのは、国の将来を担う子どもたち自身です。しかし、医療費無料化などの子育て支援で大切なのは、市民に定住してもらい、将来はお返ししたいと思ってもらうことです。

(2018年2月21日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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