子どもの医療費助成

全国の自治体が、子どもの医療費への助成を競い合っています。2018年4月時点で、高校生まで助成する自治体は全体の3割を超えました。5年前の3倍以上の水準になっています。住民を呼び込む手段として、窓口負担の無料化や助成対象年齢の引き上げが広がっています。子育て世代の評価は高いのですが、安易な助成は、医療費の膨張に拍車をかける恐れをはらんでいます。日本経済新聞社の調査によれば、2018年4月時点で、中学生まで助成する自治体は6割近くにのぼっています。今では中学生以上が全国標準となっています。
子どもの医療費の助成が自治体で始まったのは、1960年代です。診療を受けられない乳幼児の命を守るためでした。全国で高校卒業まで無料化すると、自治体の助成が全くない場合に比べて、医療保険の給付費は年8,400億円増えることになります。医療機関窓口でいったん払った分を後から払い戻すのではなく、はじめから払う必要のない方式を採ると、医療費の伸びは一段と加速してしまいます。安易な無償化は、自治体の財政負担にとどまらず、医療費全体を押し上げることになってしまいます。子育てしやすい環境を長く保つためにも、定額負担や所得制限の導入などを考えるべきです。

(2018年7月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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