子どもの医療費

 市区町村が住民に医療費を補助するサービスが拡大してきています。入院費では小学生に加え、中学生と高校生まで対象とする自治体が10年前の15倍に増加しています。全自治体の9割を占めており、一部は大学生にも広げ始めています。通院の医療費でも中学生以上を補助する自治体は、20164月時点で全体の8割に達しています。人口減が進む中、独自補助で子育て世帯を争奪し合う構図だが、安易な受診を増やし医療費膨張につながっています。
 国の医療保険制度では、窓口自己負担の本来の割合は6歳までの子どもが2割で、小学生や中学生、高校生は3割でした。過去には自治体の医療費補助の対象は就学前の子どもにとどまっていました。現在の自治体の医療補助は、医療保険財政の窮状を無視した大盤振る舞いになっています。地方は予算の不足分を地方交付税という形で国に請求書を回し、最後は赤字国債で穴埋めすることになります。問題は、自力で財源を確保しないまま、サービス給付を手厚くする地方財政の無責任なメカニズムにあります。国は自治体で足りない予算を地方交付税で補填しており、その額は毎年約15兆円にも達しています。自治体の支出が増えて財政が苦しくなるほど、国からの財政支援が増えることになります。厚生労働省の試算では、仮に高校生まで患者負担を無料化すると、自治体の助成が全くない場合に比べ医療保険からの給付費は8,400億円も増えてしまいます。

 

(2017年8月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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