子宮移植に関する臨床研究

 先天的に子宮がない女性や、子宮頸がんなどの疾患による子宮摘出した女性に対し、代理懐胎に代わる新たな選択肢として子宮移植という新たな生殖技術が考えられるようになってきています。子宮移植はドナーからの子宮の提供を受け、子宮の移植をうけるレシピエントに妊娠や出産を可能にさせるための技術です。まず夫婦の受精卵を事前に凍結保存しておき、レシピエントにドナーの子宮を移植します。しかし、卵巣は移植しません。次に移植子宮がレシピエントに生着したのを確認し、1年間かけて拒絶反応の確認や免疫抑制剤を減量します。その後凍結胚を移植し、妊娠および出産を目指します。出産後は移植子宮を摘出することになるので、レシピエントは出産後の免疫抑制剤の服用は不要となる。
 2014年スウェーデンにおいて、26歳の女性が子宮移植後1年で胚移植を受け、妊娠し、健康な男児を出産しています。しかしながら、子宮移植の臨床応用にあたっては、検討を要するさまざまな医学的、倫理的、社会的な問題点があげられます。その中でも特にレシピエント、ドナー、生まれてくる子に与える負担やリスクは最大限配慮されなければならない課題です。手術手技の困難性、組織適合性、妊娠中に使用する免疫抑制剤の胎児への影響など、医学的にも解決されなければならない問題が多く残っています。またさまざまな領域に跨る医療であり、幅広い職種で構成されたチーム医療体制が必要とされます。産婦人科医や移植外科医のみならず、形成外科医、精神外科医、小児科医、内科医、麻酔科医、移植コーディネーター、看護師、薬剤師、カウンセラーなどのサポート体制の基盤が構築された上で考慮されるべき医療です。

(2017年3月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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