子宮移植を考える―Ⅲ

医学的問題点
 子宮移植における医学的問題としては、手術手技の困難性、手術後の合併症、拒絶反応の診断、免疫抑制剤による催奇形性などが挙げられます。手術手技に関しては、生体間で実施される場合、ドナーの侵襲が大きい術式であり、より低侵襲なドナー手術手技を目指す必要があります。子宮移植の際に実施される子宮摘出手術は、子宮頸がんの広汎子宮摘出術よりも長い子宮動静脈の血管柄を摘出しなければならないので、出血量が多くなり、長時間の手術を要します。また尿管損傷などの合併症が起こりうるリスクを含めた丁寧な説明が必要となります。
 レシピエントに対しては、手術や免疫抑制によるリスクを考慮しなければなりません。手術リスクは腎移植と同等と考えられますが、子宮移植の場合、細い血管の吻合を両側で行わなければならない点で、より難易度の高い手術です。手術時の感染、術後出血、血栓症、手術麻酔もリスクとなり得ます。免疫抑制は、臓器移植を受ける患者にとってのリスクとしてよく知られています。腎毒性の副作用や免疫抑制剤による皮膚がんやリンパ腫といった悪性腫瘍のリスクに関しての注意深い観察が必要となります。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。