子宮移植を考える―Ⅳ

倫理的問題点
 子宮移植の目的は他の臓器移植と異なり、臓器の生着及び機能回復だけではなく、その先にある健児を得ることにあります。子宮移植の臨床応用には、解決すべき多くの課題が挙げられ、医学的、倫理的、社会的問題を考慮する必要があります。子宮移植は子どもを持つための移植手術であり、生命を維持するための他臓器の移植手術とは異なった性質を有しており、より高い安全性が求められます。また、移植は一時的なものであり、免疫抑制薬投与による副作用を減らすために、移植子宮は1児か2児の出産後に摘出されるという点では、新しいタイプの移植です。子宮移植を取り巻く倫理的な諸問題は、生殖、親子関係、医療費、医療の発展といった広範囲に及ぶものであり、国や文化の違い、宗教、法律の違いによっても、子宮移植に対する考え方が異なると思われます。また、子宮移植では、ドナーやレシピエントのみならず、産まれてくる子どもを含めた3者についてリスクの評価をしなければなりません。
 子宮移植により産まれてくる子どもは、胎内において免疫抑制薬の下におかれることとなります。他の臓器職による免疫抑制下にある母親から産まれた子どもに、特筆すべき先天性奇形率の上昇は認められていませんが、妊娠中毒症や早産のリスクの上昇がみられ、低出生体重児の増加が報告されていることからも、慎重な子どものフォローアップが必要となります。創傷治癒と免疫抑制の安定化に十分な時間を要することより、臓器移植後の妊娠には、少なくとも1年の間を置くべきだとされています。

(吉村 やすのり)

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