子宮移植を考える―Ⅶ

法的課題―③
 子宮移植においては、ドナーからの臓器摘出行為とレシピエントに対する臓器移植行為が法的に正当化されるかどうかは問題となります。肝移植や腎移植の場合、レシピエントについては、治療行為の正当化の要件を充たしていると考えられ、レシピエントに対する移植行為が生命に対する危険を伴う重大な傷害であっても、違法性阻却が認められることになります。しかしながら、レシピエントにとって子宮移植を受けることは、生命や健康の維持のために必要な行為ではなく、医学的適応性が認められず、医的侵襲が違法と判断される可能性が否定できません。
 さらに、ドナーからの臓器摘出行為は、ドナーの生命や健康の維持ならびに増進にはならないばかりか、リスクを与えるだけの行為ともみなされるかもしれません。たとえドナーの同意があったとしても、刑法上の傷害罪の違法性は阻却されない可能性が残ります。子宮移植においてドナーからの臓器摘出がドナーの生命に危険を及ぼす可能性がある場合には、たとえ同意があっても傷害罪の成立が認められることになってしまいます。ここでいう生命の危険とは、具体的かつ高度な危険という意味に理解されるべきであって、危険がゼロではないということを意味するものではないと解すべきです。

(吉村 やすのり)

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