富裕層が保有する資産の割合

世界で富裕層への課税強化を模索する動きが広がっています。新型コロナウイルス危機で、拡大が懸念される格差を税制で是正するとともに、危機後の経済立て直しをにらんだ財源を確保する狙いです。
OECDの発表によれば、米欧日27カ国の平均値として、上位10%の富裕層に富の半分が集中しています。上位2割の富裕層が全ての金融資産の約8割を保有し、相続で受け継ぐ資産は下位2割の層と比べて50倍近くになっています。米バイデン政権は富裕層への最高税率を40%近くに引き上げるなどして、増収分を子育て・教育支援などに回す構想を打ち出しています。
日本は、上位1%の富裕層が保有する資産が全体に占める比率が11%と、先進国でも低率です。税収に占める相続税・贈与税の割合は、OECD平均の2倍超で、両税の最高税率も55%と先進国で最も高くなっています。日本の課題は、むしろ高齢者への資産の偏りが強まっている点です。総務省の2019年の調査によれば、世帯主が60歳代の世帯の平均資産残高は約1,900万円で、30歳代の3.6倍となっています。若年層の非正規雇用の増加などで、1999年時点で3倍だった差がさらに広がっています。

(2021年8月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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