小児臓器移植

 脳死判定された人からの臓器移植が認められてから、今年で20年が経過しました。2010年には本人の意思表示がなくても家族の承諾があれば提供できるようになり、その後は大幅に増えました。2016年の提供数は、過去最多の64例に達しています。しかし、提供を待つ患者は約14千人に上っています。うち9割が腎臓移植の待機患者です。2015年の人口100万人当たりの脳死による臓器提供者数は日本は0.7人です。スペイン39.7人、アメリカ28.5人などを大きく下回っています。オーストリアやフランスなどでは生前に拒否の意思表示をしない限り臓器を提供することが原則で、臓器移植は定着しています。
 15歳未満の小児からの移植も7年前に可能になりましたが、件数はなかなか増えず、今も心臓移植のため海外に渡航する子どもは少なくありません。小児から提供された肺や心臓は、その大きさが合う小児に移植されるのが一般的です。特に重い心臓病の小児は体に合う心臓が提供されるまで待つことはできません。また腎臓や肝臓と違って親などからの生体移植もできません。国際移植学会は、移植が必要な患者の命は自国で救える努力をすることとするイスタンブール宣言を出しています。移植を望む人が国内で受けられるよう、国民の理解向上も取り組むことが大切です。

(2017年2月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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