就労意欲そぐ遺族年金制度

現在まで続く遺族年金制度は、男性は外で働き、女性は家庭を守るという古い価値観を引きずったままです。条件によっては、女性が会社などに勤めて保険料を納めても、勤めなかった場合と比べて老後の年金額が変わらないケースもあります。少子高齢化や人口減少が進み、政府は女性の労働力の活用を図っていますが、就労意欲を下げるような仕組みが今も続いています。
自分の老齢厚生が遺族厚生より高ければ、老齢厚生をそのまま受給し、遺族厚生は支給されません。逆に、老齢厚生が遺族厚生より低ければ、老齢厚生をまず受給した上で、遺族厚生との差額が遺族厚生として支給されます。ずっと夫の扶養に入り、自分の老齢厚生がない専業主婦の場合は、夫の遺族厚生の全額を受けられます。つまり、妻の老齢厚生が遺族厚生を上回らない限り、妻が受け取る年金額は働いても働いていなくても同じという仕組みです。
老齢年金が課税の対象となる一方、遺族年金は非課税です。自分の老齢年金がある人ほど、税金を多く払うことになります。若い頃も含めて四十年以上、社会保険に加入して働いてきた女性は、遺族年金が自分の年金をわずかに上回る程度でほとんどもらえず、年金収入の大半が課税対象になってしまいます。
総務省の労働力調査によれば、かつては専業主婦世帯が主流でしたが、共働き世帯が年々増えて逆転しています。2021年には共働き世帯が1,247万に上り、専業主婦世帯の2倍超となっています。働く女性が増えているのに、年金制度は昭和の仕組みのままでは、女性の就労意欲をそぐことになってしまいます。

 

(2022年10月20日 東京新聞)
(吉村 やすのり)

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